【業界別DX事例集】成功企業に学ぶ施策・KPI・人材育成のポイント
「DX推進のため、同業他社の成功事例を調べて経営層に提案してほしい」。そのような指示を受けたものの、どの事例を参考にすべきか悩んでいませんか。インターネット上には技術寄りの情報があふれる一方で、ROIや組織づくり、人材育成といった実務の視点でまとまった事例を見つけるのは簡単ではありません。そこで本記事では製造業や小売業をはじめとする業界別の最新DX成功事例を整理し、成功要因とKPIを明示。さらに事例から抽出した共通フレームワークと人材育成のポイントまで紹介して、DX施策の具体化をサポートします。
目次
- DX事例を読み解く前に必要な基礎知識
- 業界別 最新DX成功事例
- 事例に共通する成功要因
- DX事例創出を支える人材育成ロードマップ
- DXを成功に導くReskilling Campの支援力
- 成功事例を再現する"人と組織"のアップデートを始めよう
DX事例を読み解く前に必要な基礎知識
DX事例を正しく理解し自社に応用するには、まずデジタル化に関する3つの概念を整理する必要があります。
デジタリゼーション、デジタライゼーション、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)は、いずれもデジタル技術を活用する取り組みですが、その目的と影響範囲は大きく異なります。この違いを理解せずに事例を読み進めると、表面的な技術導入に目を奪われ、本質的な成功要因を見落としてしまいかねません。
ここでは3つの概念を段階的に解説し、DX推進における位置づけを明確にします。
デジタリゼーションとはアナログ情報のデジタル化
デジタリゼーションとは、アナログ形式の情報をデジタルデータに変換する取り組みです。紙の書類をPDFでスキャンしたり、手書きの伝票を電子入力したりする作業が代表例となります。このプロセスではデータの保存・検索・共有が容易になり、物理的なスペースの削減や情報の劣化防止といったメリットが得られるでしょう。
ただしデジタリゼーションの段階では、業務の流れそのものは変わりません。たとえば紙の稟議書を電子化しても、承認フローや決裁のルールは従来のまま維持されます。つまりデジタリゼーションは情報の形式を変えるだけであり、業務効率化や価値創出には直接つながりにくいのです。しかし次の段階であるデジタライゼーションを進めるための土台として、データ化は重要な第一歩となります。
デジタライゼーションとは業務プロセスのデジタル化
デジタライゼーションは、デジタル技術を活用して業務プロセス全体を再設計し効率化する取り組みです。デジタリゼーションで蓄積されたデータを活用し、業務の自動化や最適化を実現します。たとえば電子化された発注データをもとにRPAが自動で在庫管理システムに連携したり、AIが過去の承認パターンを学習して稟議の優先順位を判断したりする仕組みが該当します。
この段階では業務の流れ自体が変わり、生産性向上やコスト削減といった具体的な成果が現れるでしょう。製造業における生産管理システムの導入や、小売業のPOSデータを活用した在庫最適化などはデジタライゼーションの好例です。
ただしデジタライゼーションはあくまで既存業務の効率化にとどまり、ビジネスモデルそのものを変革するには至りません。次のステップであるDXに進むためには、デジタライゼーションで蓄積したデータや知見を戦略的に活用する視点が求められます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とはビジネスモデルと顧客体験の変革
DXはデジタル技術を活用してビジネスモデルや顧客体験を根本から変革し、競争優位を築く活動を指します。単なる業務効率化を超えて、新たな価値提供の方法を創出したり、市場での立ち位置を再定義したりする取り組みです。たとえば製造業が製品販売からサブスクリプション型のサービス提供へとビジネスモデルを転換したり、小売業が店舗とオンラインを統合したオムニチャネル戦略で顧客体験を刷新したりする事例がDXに該当します。
DXの本質は技術導入そのものではなく、技術を手段としてビジネスのあり方を変えることです。したがってDX推進には経営層のコミットメントと、組織文化の変革が重要となります。デジタリゼーションとデジタライゼーションが主にIT部門主導で進められるのに対し、DXは事業部門がオーナーシップを持ち、全社横断で取り組む必要があるのです。
業界別 最新DX成功事例
ここからは製造業・小売業を中心に、実際に成果を上げたDX事例を業界別に紹介します。各事例では施策の内容だけでなく、KPIと成功要因も併せて解説しますので、自社への応用イメージを持ちながら読み進めてください。
製造業:旭化成・住友化学・AGC―デジタルツインとAI最適化で生産性を向上ー
製造業のDXでは、デジタルツイン技術とAI最適化が具体的な成果を生んでいます。旭化成はマテリアルズインフォマティクス(MI)とデジタルツインを活用し、研究開発の高速化とスマートファクトリー化を推進。MIを活用することで材料開発速度を従来の20倍以上に向上させ、デジタルツインにより設備の最適運転や予兆保全を実現しています。
(参考:旭化成における「デジタル×共創」によるビジネス変革)
住友化学は石油化学プラントにおいて、AIを活用した生産計画最適化システム「TSPlanner」を導入。このシステムは生産計画とエネルギー管理を統合し、工場全体のエネルギー消費を最適化します。事前検証ではエネルギーコストの大幅削減が確認されました。
(参考:日立と住友化学、AIを活用し、エネルギー消費の低減・最適化を図る 生産計画の自動立案システムの実用化に向け、実工場での検証を開始)
AGCは独自のデータサイエンティスト育成プログラム「Data Science Plus」を確立し、AIを用いた自動検査システムをガラス製造工程に採用しました。画像データから欠陥をリアルタイムで抽出・判別することで製品の高品質化に貢献しています。
(参考:独自のデータサイエンティスト育成プログラム「Data Science Plus」を確立)
これらの企業に共通するのは、現場の熟練者と データサイエンティストが協働してPoC(概念実証)を重ねた点です。技術導入ありきではなく、解決すべき課題を明確にしてから最適な技術を選定したことが成功の鍵だといえるでしょう。
小売業:西友――AI需要予測+RPA自動発注で廃棄ロスを削減
小売業では在庫最適化と顧客体験の向上が主要なDXテーマです。西友は全国の店舗から集めたPOSデータと気象データ、イベント情報などをAIで分析し、商品ごとの需要を高精度で予測するシステムを導入しました。さらにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせることで、予測結果に基づく発注業務を自動化。この取り組みにより食品の廃棄ロスと欠品率の削減を推進しています。
(参考:西友が日立との協創を通じ、AIによる需要予測に基づき自動発注を行うシステムを導入開始)
従業員は発注業務から解放された時間を接客や売り場づくりに充てられるようになり、顧客満足度の向上にもつながっています。西友の事例はコスト最適化と顧客体験の両面で成果を出した好例といえるでしょう。
小売業:POS+AI分析で在庫最適化&パーソナライズ販促
別の小売企業ではPOSデータとAI分析を活用したパーソナライズ販促に成功しています。顧客の購買履歴や行動パターンをAIが分析し、個々の顧客に最適なクーポンやレコメンド商品を提示する仕組みです。従来の一律セールと比べてクーポンの利用率が向上し、客単価も増加しました。
この事例のポイントは、システム導入と並行してマーケティング担当者向けのデータ活用研修を実施した点です。AIの出力結果を鵜呑みにせず、現場の知見と掛け合わせて施策を磨き上げるスキルを育成したことで、継続的な改善サイクルが回るようになりました。
その他業種:最新事例をまとめてチェック(金融・物流・公共)
金融業界では大手銀行がAIチャットボットによる問い合わせ対応を導入し、オペレーターの業務量を削減しました。物流業界ではトラックの配送ルートをAIで最適化し、燃料費と走行距離を削減した事例も。公共セクターでは自治体が住民向けサービスをオンライン化し、窓口の待ち時間を半減させた取り組みが挙げられます。
いずれの事例も、技術導入だけでなく業務プロセスの再設計などを並行して進めた点が共通しています。
事例に共通する成功要因
ここまで紹介した事例を分析すると、業種を問わず3つの成功要因が浮かび上がります。明確なビジネスゴールとオーナーシップの設定、スモールスタートによるクイックウィンの創出、そしてDX人材の適材配置とリスキリングです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 明確なビジネスゴールとオーナーシップ
成功したDX事例では必ず、経営層が「何のためにDXを推進するのか」を明示しています。たとえば「3年以内に新規デジタルサービスで売上高の10%を創出する」「製造コストを15%削減して価格競争力を高める」といった具体的な目標です。さらに重要なのは、その目標達成に責任を持つオーナー(担当役員や事業部長)を明確にすることです。
オーナーシップが曖昧なままだと、IT部門とビジネス部門の間で責任の押し付け合いが起こりかねません。成功企業では事業部門のトップがDXプロジェクトのオーナーとなり、IT部門やデータサイエンティストと協働する体制を構築しています。
② スモールスタートPoC→クイックウィン創出
大規模なシステム刷新を一気に進めるのではなく、小さなPoCで仮説検証を重ねるアプローチが有効でしょう。たとえば小売業では特定の店舗と商品カテゴリに絞ってAI需要予測を試行し、効果を確認してから全店展開したり、製造業のデジタルツイン導入でも、まず1つのプラントで概念実証を行い、ROIを確認した上で他拠点へ横展開します。
スモールスタートのメリットは、失敗のリスクを抑えながら早期に成果を示せる点です。小さな成功(クイックウィン)を積み重ねることで、経営層や現場の理解と協力を得やすくなり、次のステップへの投資判断もスムーズに進みます。
③ DX人材5類型の適材配置とリスキリング
DXを推進するには多様なスキルを持つ人材が必要です。経済産業省が示すDX人材の5類型(ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ専門家)を参考に、自社に必要な人材像を定義するとよいでしょう。成功企業では外部から即戦力を採用するだけでなく、既存社員のリスキリングにも力を入れています。
たとえばホーユー株式会社のDX人材育成事例では、デジタル人材を3つの階層(Digital Meister Level、中間レベル、ベースレベル)に分け、各レベルに応じたスキルセットと育成スキームを設計しました。さらにe-Learningやワークショップ、キャリアコーチ面談を組み合わせた実践的なカリキュラムを実施し、技術活用や学びに対する意欲を醸成しています(参考:パーソルイノベーション株式会社 Reskilling Camp 【ホーユー株式会社】情シス起点で全社を巻き込んだデジタル人材育成へチャレンジ。導入プロセスをフル動画で公開中)。このようにリスキリングを戦略的に進めることで、DXの持続的な推進体制が整うでしょう。
DX事例創出を支える人材育成ロードマップ

DX事例を自社で創出するには、技術導入と並行して人材育成を計画的に進める必要があります。ここでは4つのステップで構成されるロードマップを示します。
Step1:人材像・KPI設定とスキルギャップ分析
最初に自社のDX戦略に基づいた人材像を定義し、育成目標となるKPIを設定します。たとえば「1年以内にデータ分析スキルを持つ社員を50名育成する」「プロジェクトマネジメントができるビジネスアーキテクトを10名配置する」といった具体的な数値目標です。
次にアセスメントツールを活用して現状のスキルレベルを可視化し、目標とのギャップを分析。ギャップが明らかになれば、どのような研修プログラムが必要かが見えてきます。
Step2:リテラシー研修+業務シナリオワークショップ
次のステップではDXリテラシー研修と業務シナリオに基づくワークショップを組み合わせます。リテラシー研修ではAIやクラウド、データ分析といった基礎知識を習得し、全社員が共通言語を持てるようにします。ただし座学だけでは実務への応用が難しいため、自部門の業務課題をテーマにしたワークショップを並行して実施するのが効果的です。
たとえば「自部門の業務プロセスをデジタル化するとしたら、どこから着手すべきか」をグループで議論し、簡易的な改善案を作成します。このように学んだ知識をすぐに実務の文脈で使うことで、学習の定着率が高まります。
Step3:実践ハンズオンとピアラーニングで定着
3つ目のステップでは実際にツールを操作するハンズオン研修と、受講者同士で学び合うピアラーニングを導入します。たとえばBIツールやRPA、クラウドサービスを使った演習を通じて、データの可視化や業務自動化を体験させます。
ピアラーニングでは受講者がグループを組み、互いの進捗や課題を共有しながら学びを深めます。またこの段階でラーニングバイアス(学びについての偏った認識や意識)を是正するプログラムを組み込むと、「学習は新人がやるもの」「忙しくて学ぶ時間がない」といった固定観念を取り除けるでしょう。
Step4:実務プロジェクト適用とROI測定
最後のステップでは研修で習得したスキルを実際の業務プロジェクトに適用し、成果を測定します。たとえば需要予測モデルを構築して在庫削減額を算出したり、RPAを導入して削減できた業務時間を定量化したりします。このROI測定により、人材育成投資の妥当性を経営層に示せます。
さらに成功事例を社内で共有することで、他部門への横展開が進みやすくなるでしょう。
DXを成功に導くReskilling Campの支援力
ここまで紹介してきた人材育成ロードマップを自社だけで実行するのは容易ではありません。Reskilling Campは企業のDX人材育成を包括的に支援するプログラムです。ここではその特徴を3つの観点から解説します。
現場PoC伴走で「学び→成果」まで一貫サポート
Reskilling Campの最大の強みは、研修だけでなく実務プロジェクトへの伴走支援まで一貫して提供する点です。
座学やハンズオンで習得したスキルを、受講者が実際の業務課題に適用する際、専門コーチが継続的にサポート。この伴走型アプローチにより、「研修を受けたけれど実務で使えない」という課題を解消できます。
DXリテラシーからビジネスアーキテクト養成まで段階別カリキュラム
Reskilling Campは受講者のスキルレベルに応じた段階別カリキュラムを提供しています。初学者向けのDXリテラシー研修から、データサイエンティストやソフトウェアエンジニアを目指す専門コース、さらにはビジネスとテクノロジーをつなぐビジネスアーキテクトの養成プログラムまで幅広くカバーします。
カリキュラムにはUdemy Businessの講座を活用したインプット学習、理解を深めるアウトプット型ワークショップ、実務適用を促すテクニカルコーチ面談、学習習慣を維持するピアラーニングなどが組み込まれています。このようにインプット・アウトプット・コーチングを組み合わせることで、知識の定着と行動変容を同時に促します。
トヨタ・ホーユーで高いROI達成した実践DX事例
Reskilling Campはすでに多くの企業でDX人材育成を支援し、高いROIを実現しています。トヨタ自動車では、Power Automateを活用した業務改善プロジェクトに取り組みました。受講者はハンズオン研修を通じてデジタルスキルを習得し、自部門の業務効率化に挑戦しています。
この取り組みで特筆すべきは、トヨタが長年培ってきた「改善」と「チームワーク」の文化がデジタル変革にも活かされている点です。「誰かのために行動する」「技能を磨く」といった同社の価値観が、デジタルスキル習得の動機付けとなりました。
(参考:パーソルイノベーション株式会社 Reskilling Camp 『改善』と『チームワーク』で挑むデジタル変革:トヨタ自動車のPower Automate活用事例)
ホーユー株式会社の事例でも、デジタル人材ビジョンとスキルセットを明確化した上で、段階的な育成プログラムを実施。受講者はデジタルスキルを活用したビジネス改善提案を行い、実際に社内で採用される成果を上げています。
(参考:パーソルイノベーション株式会社 Reskilling Camp 【ホーユー株式会社】情シス起点で全社を巻き込んだデジタル人材育成へチャレンジ。導入プロセスをフル動画で公開中)
成功事例を再現する"人と組織"のアップデートを始めよう

本記事では業界別のDX成功事例を紹介し、共通する成功要因として明確なビジネスゴール、スモールスタートによるクイックウィン、そして人材の適材配置とリスキリングを挙げました。DX事例を自社で再現するには、技術やツールの導入だけでなく、人材育成と組織文化の変革が不可欠です。
Reskilling Campは「学び→成果」まで一貫して支援する伴走型プログラムであり、すでに多くの企業で高いROIを実現しています。DX推進を任された方が次に取るべきアクションは、自社の人材像とスキルギャップを可視化し、段階的な育成計画を立てることでしょう。成功事例を再現する"人と組織"のアップデートを、今日から始めてみてはいかがでしょうか。

